口コミ│神戸・福原 ソープランド Club Royal (クラブロイヤル)
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れもん【VIP】(23)
れもん【VIP】の口コミだけ見る
投稿者:シン太郎左衛門(あるいは生き物たちの記録)様
ご来店日 2023年10月15日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士らしい。今更、実は武士ではないとなったとしても、誰にも言わず黙っておくだろう。
先週のはじめ、偏頭痛がひどくて仕事を休んだ。水曜日は、頭痛は治まっていたが、ズル休みして、昼前までぐっすり寝た。腹も減ったし、コンビニに買い出しに行くため、モゾモゾと布団から這い出すと、シン太郎左衛門が、
「泥のように眠っておられましたな」
「うん、お蔭ですっかり生き返った」
「・・・こうして見ると、父上は、日本人離れした顔立ちですな」
手の甲で両目を擦りながら、「そうかね。どこの国の人に見える?」
「モグラ。穴から引っ張り出されたモグラにしか見えぬ」
「なるほど」
「コンビニに行く前に髭を剃ってくだされ。その顔のまま、万が一にも、れもんちゃんに出くわしたら一大事でござる」
「こんな何もない田舎町に、れもんちゃんが現れるはずがない。れもんちゃんは女の子休暇中だから美容院に行って、可愛さに磨きをかけている頃だろう」
「間違いござらぬ」
「そういうことはないと思うが、空飛ぶ円盤を見掛けたら、急いで引き返して髭を剃ろう。れもんちゃんは、れもん星人だから、移動には円盤を使うのだ」
「うむ。ところで、れもんちゃんの円盤はどんなものござるか」
「見たことがない。多分、軽だろう。色は、レモンイエローだ」
「うむ。きっとナンバープレートには『れもんちゃん』と書いてござるな」
そんな他愛ない話をしながら、マスクで顔を隠して家を出るなり、隣家の奥さん、つまりニートの金ちゃんのお母さんに出くわした。
私の顔を見るなり、「あら、お休みでしたの?」と、嬉しそうに話し掛けてきた。私に会って嬉しそうにする人間は滅多にいないし、金ちゃんママにしても平素は特に愛想がいいわけでもない。多分頼み事だと思ったら、案の定、「実は・・・」と頼み事を始めた。
彼女の話を纏めれば、「夫婦揃って法事のため明日の晩まで家を空けねばならぬが、留守を頼むはずの息子がインフルになってしまい、ペットの世話と、出来れば息子の世話も併せて頼みたい」ということだった。金ちゃんはともかく、ラッピーともんちゃんの為なら一肌脱ぐしかなかった。
金ちゃんパパママの車が出て行くと、私は預かった鍵で隣家の玄関のドアを開けた。
「よしよし、米が炊けた匂いがする」と言うと、シン太郎左衛門は呆れた様子で、
「金ちゃんのお母上、驚いておりましたぞ」
「そうか?」
「うむ。留守番は任せてもらって結構だが、任された以上、徹底的に留守番して、ラッピーたちの散歩を除いて一歩も家を出ない、買い物にも行かない、腹が減ったら、お宅の冷蔵庫にあるものを食べる、早速飯を炊いてくれ、とは中々言えないことでござる」
「そうか」
「留守番ぐらいで恩義に感じてもらう必要もないし、お土産は絶対に要らない、お土産に美味いものはなく、持て余すだけだ、とも、普通は言わぬ」
「俺は儀礼的なことに興味がないのだ」
「うむ。少しは興味を持たれた方がよろしかろう」
金ちゃん宅に上がり込むと、まずダイニングキッチンに入り、炊飯器の飯を確認し、冷蔵庫から食材を選び、調理を始めた。
「チンジャオロースを作る」
「うむ」
「卵スープ付きだ」
「うむ」
「デザートはシャインマスカットだ」
「うむ」
「整理も行き届き、使いやすい、よい台所だ。冷蔵庫も食材満載だ。楽しくなってきた」
「他人の家だという遠慮がまるでござらぬな」
「腹拵えを済ませたら、ラッピーともんちゃんと散歩だ」
「うむ」
「帰ってきたら、れもんちゃんのことを考えながら昼寝だ」
「楽しみでござる」
昼飯を済ますと、コーヒーを淹れて、ゆっくりと寛いだ。ラッピーともんちゃんの居場所はリビングだった。食器洗いを済ますと、リビングのドアをノックして中に入った。ラッピーは雌のラブラドールレトリバーで、もんちゃんはキジトラの雌の子猫だった。早速ラッピーが歓迎して飛んできたが、もんちゃんは警戒して部屋の隅に引っ込んでしまった。
ラッピーの澄んだ優しい眼差しはステキなものだった。彼女の頭を撫でながら、「お前は、れもんちゃんの次に美しい目をしているな」
ラッピーにインディアン・ダンスを教えたり、一緒に「オクラホマ・ミキサー」を踊ったり、楽しく過ごしていると、火照った顔の金ちゃんが入ってきた。金ちゃんは、「職業:ニート」が似合う、30前後のフリーのプログラマーだった。
「お、金ちゃん。インフルだってな。飯は食ったか?」
「プリン、食べました」
「何個?」
「一つ」
「もっと食え。プリンばかりでは飽きる。冷蔵庫にカップゼリーがあったから、それも食え。交互に合計50個食え。それで水飲んで、寝とけ。インフル野郎め、治るまで二度と出てくるな」
「ひどい言い方だなぁ」
「ひどくない。お前の為だ。俺に移したら、お前がラッピーの散歩をすることになるぞ」
「分かりましたよ」と出て行った。
廊下を歩く金ちゃんの足音を聞きながら、「よし、みんな、これから散歩に行くぞ。全員、集合。ラッピー、もんちゃんを連れといで。シン太郎左衛門、みんなに本日の散歩に関する注意事項を伝えろ」
「えっ、拙者が?」
「そうだ」
散歩にあたっての注意事項など一つも思い浮かばないシン太郎左衛門が、クラブロイヤルの利用規約の禁止事項を読み上げて、「1つ、18歳未満の方。2つ、暴力団関係者またはそれに準ずる方。3つ、・・・7つ、同業者のご利用、スカウト、引き抜き行為の禁止。8つ、カメラ・ビデオ機器による撮影・録音及び盗撮・盗聴行為の禁止・・・」などと言っている間に、私はラッピーともんちゃんにお揃いのタータンチェックのハーネスを付けてやった。
「よし、行こう。みんな、注意事項を守れよ。特にシン太郎左衛門、お前が一番心配だ」
「なんで拙者が」
爽やかに晴れた、泣きたくなるほど素敵な散歩日和だった。
「もんちゃんは川に嫌な思い出があるから、丘の上の公園に行こう」
坂をテクテク登り始めてから5分で、もんちゃんは早々疲れてしまい、ラッピーの背に乗せてやった。平日のこの時間、公園に向かう道には我々以外誰もいなかった。
「人目がないから、シン太郎左衛門、お前も出ていいぞ」
「おお、それはありがたい。ラッピー殿、背中に失礼致しまする」
公園にも人影はなかった。小さな公園で、遊具は滑り台とブランコがあるばかり。ベンチに腰を下ろすと、遠くの景色の隅々まで見渡すことができた。ひんやり冷たい風に吹かれてながら、雲一つない青空を見上げた。ラッピーともんちゃんが、じゃれ合っていた。
「動物は可愛いな。れもんちゃん以外の人間には、ほぼ興味が持てない。動物は可愛い」
「父上、少し寒くなってきました」
「だろうな、お前は全裸だからな。パンツの中に戻るか?」などと話していると、突然、ラッピーが南の空を見詰めて、一声吠えた。
ラッピーが見詰める先に目を向けると、小春日和の抜けるような青空を、かなり高度を下げて、ゆっくりと西の方角に向かって、超巨大な飛行物体が音もなく飛んでいた。
「シン太郎左衛門・・・れもんちゃんの空飛ぶ円盤は、軽ではなかった。いや円盤ですらないぞ。ほれ」
私が指差す先を見て、シン太郎左衛門は、「お、おっ!」と声を詰まらせた。
「サイズで言えば空母だな。空飛ぶ空母だ」
「あれが、れもんちゃんのマイカーでござるか」
「ああ、レモンのラッピングがしてあるからな。れもんちゃん以外に考えられない。パッと見たところでは長さは約500メートルだ。世界最大の空母よりもデカい」
「れもんちゃんは、小さな身体ながら、スケールが大きい女の子でござる」
「うん。それにお茶目でもある。船体に『マジカル・ラブリー・プリンセスれもん』と大書きしてある。その周りに輪切りにしたレモンや横から見た紡錘形のレモンが可愛らしく散り嵌められている。空飛ぶラッピング空母だ」
「うむ、自ら『マジカル・ラブリー』とは、中々言えませぬ」
「真実だから許される。むしろ、控え目すぎるぐらいだ」
「間違いござらぬ」
「ミサイル発射口みたいな物騒なものも、たくさん付いてるな」
「宇宙には危険が一杯でござる。流星が飛んできたら、レーザー光線やミサイルを発射して破砕せねばならぬ」
「れもんちゃん、カッコいいな」
「れもんちゃんは、カッコいいのでござる」
「きっと、れもんちゃんの行き付けの美容院は、れもん星にあるのだ。今、そこからの帰りだ」
「うむ。そう考えれば、れもんちゃんの『美容院に行ってきたよ~ん』という言葉には、大変な重みがございまするな」
「うん。れもんちゃん、凄いな・・・」
「やり過ぎでござる・・・」
「れもんちゃんは、いつもそうだ。可愛すぎるし、エロすぎるし」
「しかし、父上・・・こんなクチコミ、誰も信じますまい。あからさまに作り話に見えまする」
「それを言えば、お前が話をしている時点でアウトだ。れもんちゃんの凄さは、事実性の次元に囚われてはいないのだ」
「うむ。間違いござらぬ」
「よし、それじゃ、みんな」と私はグループのメンバーを呼び集めて、一列に並ばせた。
ラッピーは、のどかに飛行を続ける宇宙戦艦に向かって恋しさの籠った長い遠吠えをした。
「素晴らしい眺めだな」
「厳粛な光景でござる」
「よし、それでは、みんな、れもんちゃんに敬礼」
我々4人、いや正確には1人と2匹と1本は横一列に並び、敬礼の仕方を知る者は敬礼をして、優美に飛行する巨大な宇宙船が日の光を反射させながら視界の彼方に消え去るまで見送った。
「よし、帰ろう」
「うむ、そう致しましょう」
「シン太郎左衛門、れもんちゃんのお蔭で楽しい時間が過ごせたな」
「れもんちゃんは、やはり桁違いでござる」
「次に会ったとき、れもんちゃんの髪はサラサラだぞ」
「楽しみでござる」
縺れに縺れた二本のリードを解きほぐすと、我々は公園を後にした。
そして、今日も、れもんちゃんに会った。れもんちゃんは、やはり桁違いに凄かった。髪の毛はサラサラだった。
「れもんちゃんの行く美容院って、どこにあるの?」と訊いたら、「おうちの近くだよ」との答えであった。
我々は、その「おうち」が、れもん星の実家を意味することを知っている。
シン太郎左衛門(あるいは生き物たちの記録)様ありがとうございました。
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投稿者:シン太郎左衛門(あるいは生き物たちの記録)様
ご来店日 2023年10月15日
先週のはじめ、偏頭痛がひどくて仕事を休んだ。水曜日は、頭痛は治まっていたが、ズル休みして、昼前までぐっすり寝た。腹も減ったし、コンビニに買い出しに行くため、モゾモゾと布団から這い出すと、シン太郎左衛門が、
「泥のように眠っておられましたな」
「うん、お蔭ですっかり生き返った」
「・・・こうして見ると、父上は、日本人離れした顔立ちですな」
手の甲で両目を擦りながら、「そうかね。どこの国の人に見える?」
「モグラ。穴から引っ張り出されたモグラにしか見えぬ」
「なるほど」
「コンビニに行く前に髭を剃ってくだされ。その顔のまま、万が一にも、れもんちゃんに出くわしたら一大事でござる」
「こんな何もない田舎町に、れもんちゃんが現れるはずがない。れもんちゃんは女の子休暇中だから美容院に行って、可愛さに磨きをかけている頃だろう」
「間違いござらぬ」
「そういうことはないと思うが、空飛ぶ円盤を見掛けたら、急いで引き返して髭を剃ろう。れもんちゃんは、れもん星人だから、移動には円盤を使うのだ」
「うむ。ところで、れもんちゃんの円盤はどんなものござるか」
「見たことがない。多分、軽だろう。色は、レモンイエローだ」
「うむ。きっとナンバープレートには『れもんちゃん』と書いてござるな」
そんな他愛ない話をしながら、マスクで顔を隠して家を出るなり、隣家の奥さん、つまりニートの金ちゃんのお母さんに出くわした。
私の顔を見るなり、「あら、お休みでしたの?」と、嬉しそうに話し掛けてきた。私に会って嬉しそうにする人間は滅多にいないし、金ちゃんママにしても平素は特に愛想がいいわけでもない。多分頼み事だと思ったら、案の定、「実は・・・」と頼み事を始めた。
彼女の話を纏めれば、「夫婦揃って法事のため明日の晩まで家を空けねばならぬが、留守を頼むはずの息子がインフルになってしまい、ペットの世話と、出来れば息子の世話も併せて頼みたい」ということだった。金ちゃんはともかく、ラッピーともんちゃんの為なら一肌脱ぐしかなかった。
金ちゃんパパママの車が出て行くと、私は預かった鍵で隣家の玄関のドアを開けた。
「よしよし、米が炊けた匂いがする」と言うと、シン太郎左衛門は呆れた様子で、
「金ちゃんのお母上、驚いておりましたぞ」
「そうか?」
「うむ。留守番は任せてもらって結構だが、任された以上、徹底的に留守番して、ラッピーたちの散歩を除いて一歩も家を出ない、買い物にも行かない、腹が減ったら、お宅の冷蔵庫にあるものを食べる、早速飯を炊いてくれ、とは中々言えないことでござる」
「そうか」
「留守番ぐらいで恩義に感じてもらう必要もないし、お土産は絶対に要らない、お土産に美味いものはなく、持て余すだけだ、とも、普通は言わぬ」
「俺は儀礼的なことに興味がないのだ」
「うむ。少しは興味を持たれた方がよろしかろう」
金ちゃん宅に上がり込むと、まずダイニングキッチンに入り、炊飯器の飯を確認し、冷蔵庫から食材を選び、調理を始めた。
「チンジャオロースを作る」
「うむ」
「卵スープ付きだ」
「うむ」
「デザートはシャインマスカットだ」
「うむ」
「整理も行き届き、使いやすい、よい台所だ。冷蔵庫も食材満載だ。楽しくなってきた」
「他人の家だという遠慮がまるでござらぬな」
「腹拵えを済ませたら、ラッピーともんちゃんと散歩だ」
「うむ」
「帰ってきたら、れもんちゃんのことを考えながら昼寝だ」
「楽しみでござる」
昼飯を済ますと、コーヒーを淹れて、ゆっくりと寛いだ。ラッピーともんちゃんの居場所はリビングだった。食器洗いを済ますと、リビングのドアをノックして中に入った。ラッピーは雌のラブラドールレトリバーで、もんちゃんはキジトラの雌の子猫だった。早速ラッピーが歓迎して飛んできたが、もんちゃんは警戒して部屋の隅に引っ込んでしまった。
ラッピーの澄んだ優しい眼差しはステキなものだった。彼女の頭を撫でながら、「お前は、れもんちゃんの次に美しい目をしているな」
ラッピーにインディアン・ダンスを教えたり、一緒に「オクラホマ・ミキサー」を踊ったり、楽しく過ごしていると、火照った顔の金ちゃんが入ってきた。金ちゃんは、「職業:ニート」が似合う、30前後のフリーのプログラマーだった。
「お、金ちゃん。インフルだってな。飯は食ったか?」
「プリン、食べました」
「何個?」
「一つ」
「もっと食え。プリンばかりでは飽きる。冷蔵庫にカップゼリーがあったから、それも食え。交互に合計50個食え。それで水飲んで、寝とけ。インフル野郎め、治るまで二度と出てくるな」
「ひどい言い方だなぁ」
「ひどくない。お前の為だ。俺に移したら、お前がラッピーの散歩をすることになるぞ」
「分かりましたよ」と出て行った。
廊下を歩く金ちゃんの足音を聞きながら、「よし、みんな、これから散歩に行くぞ。全員、集合。ラッピー、もんちゃんを連れといで。シン太郎左衛門、みんなに本日の散歩に関する注意事項を伝えろ」
「えっ、拙者が?」
「そうだ」
散歩にあたっての注意事項など一つも思い浮かばないシン太郎左衛門が、クラブロイヤルの利用規約の禁止事項を読み上げて、「1つ、18歳未満の方。2つ、暴力団関係者またはそれに準ずる方。3つ、・・・7つ、同業者のご利用、スカウト、引き抜き行為の禁止。8つ、カメラ・ビデオ機器による撮影・録音及び盗撮・盗聴行為の禁止・・・」などと言っている間に、私はラッピーともんちゃんにお揃いのタータンチェックのハーネスを付けてやった。
「よし、行こう。みんな、注意事項を守れよ。特にシン太郎左衛門、お前が一番心配だ」
「なんで拙者が」
爽やかに晴れた、泣きたくなるほど素敵な散歩日和だった。
「もんちゃんは川に嫌な思い出があるから、丘の上の公園に行こう」
坂をテクテク登り始めてから5分で、もんちゃんは早々疲れてしまい、ラッピーの背に乗せてやった。平日のこの時間、公園に向かう道には我々以外誰もいなかった。
「人目がないから、シン太郎左衛門、お前も出ていいぞ」
「おお、それはありがたい。ラッピー殿、背中に失礼致しまする」
公園にも人影はなかった。小さな公園で、遊具は滑り台とブランコがあるばかり。ベンチに腰を下ろすと、遠くの景色の隅々まで見渡すことができた。ひんやり冷たい風に吹かれてながら、雲一つない青空を見上げた。ラッピーともんちゃんが、じゃれ合っていた。
「動物は可愛いな。れもんちゃん以外の人間には、ほぼ興味が持てない。動物は可愛い」
「父上、少し寒くなってきました」
「だろうな、お前は全裸だからな。パンツの中に戻るか?」などと話していると、突然、ラッピーが南の空を見詰めて、一声吠えた。
ラッピーが見詰める先に目を向けると、小春日和の抜けるような青空を、かなり高度を下げて、ゆっくりと西の方角に向かって、超巨大な飛行物体が音もなく飛んでいた。
「シン太郎左衛門・・・れもんちゃんの空飛ぶ円盤は、軽ではなかった。いや円盤ですらないぞ。ほれ」
私が指差す先を見て、シン太郎左衛門は、「お、おっ!」と声を詰まらせた。
「サイズで言えば空母だな。空飛ぶ空母だ」
「あれが、れもんちゃんのマイカーでござるか」
「ああ、レモンのラッピングがしてあるからな。れもんちゃん以外に考えられない。パッと見たところでは長さは約500メートルだ。世界最大の空母よりもデカい」
「れもんちゃんは、小さな身体ながら、スケールが大きい女の子でござる」
「うん。それにお茶目でもある。船体に『マジカル・ラブリー・プリンセスれもん』と大書きしてある。その周りに輪切りにしたレモンや横から見た紡錘形のレモンが可愛らしく散り嵌められている。空飛ぶラッピング空母だ」
「うむ、自ら『マジカル・ラブリー』とは、中々言えませぬ」
「真実だから許される。むしろ、控え目すぎるぐらいだ」
「間違いござらぬ」
「ミサイル発射口みたいな物騒なものも、たくさん付いてるな」
「宇宙には危険が一杯でござる。流星が飛んできたら、レーザー光線やミサイルを発射して破砕せねばならぬ」
「れもんちゃん、カッコいいな」
「れもんちゃんは、カッコいいのでござる」
「きっと、れもんちゃんの行き付けの美容院は、れもん星にあるのだ。今、そこからの帰りだ」
「うむ。そう考えれば、れもんちゃんの『美容院に行ってきたよ~ん』という言葉には、大変な重みがございまするな」
「うん。れもんちゃん、凄いな・・・」
「やり過ぎでござる・・・」
「れもんちゃんは、いつもそうだ。可愛すぎるし、エロすぎるし」
「しかし、父上・・・こんなクチコミ、誰も信じますまい。あからさまに作り話に見えまする」
「それを言えば、お前が話をしている時点でアウトだ。れもんちゃんの凄さは、事実性の次元に囚われてはいないのだ」
「うむ。間違いござらぬ」
「よし、それじゃ、みんな」と私はグループのメンバーを呼び集めて、一列に並ばせた。
ラッピーは、のどかに飛行を続ける宇宙戦艦に向かって恋しさの籠った長い遠吠えをした。
「素晴らしい眺めだな」
「厳粛な光景でござる」
「よし、それでは、みんな、れもんちゃんに敬礼」
我々4人、いや正確には1人と2匹と1本は横一列に並び、敬礼の仕方を知る者は敬礼をして、優美に飛行する巨大な宇宙船が日の光を反射させながら視界の彼方に消え去るまで見送った。
「よし、帰ろう」
「うむ、そう致しましょう」
「シン太郎左衛門、れもんちゃんのお蔭で楽しい時間が過ごせたな」
「れもんちゃんは、やはり桁違いでござる」
「次に会ったとき、れもんちゃんの髪はサラサラだぞ」
「楽しみでござる」
縺れに縺れた二本のリードを解きほぐすと、我々は公園を後にした。
そして、今日も、れもんちゃんに会った。れもんちゃんは、やはり桁違いに凄かった。髪の毛はサラサラだった。
「れもんちゃんの行く美容院って、どこにあるの?」と訊いたら、「おうちの近くだよ」との答えであった。
我々は、その「おうち」が、れもん星の実家を意味することを知っている。
シン太郎左衛門(あるいは生き物たちの記録)様ありがとうございました。