口コミ│神戸・福原 ソープランド Club Royal (クラブロイヤル)
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れもん【VIP】(23)
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投稿者:シン太郎左衛門の『絶対れもん主義宣言』様
ご来店日 2023年11月12日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士だが、将来の夢はラッパーだと言うし、チョンマゲもしてないし、かなり出鱈目なヤツだと思われる。
さて、家の固定電話が鳴っても取らぬ主義だが、先週の某日、その日に限って魔が差して、うっかり出てしまった。その結果、親戚の子供を1日預かることになった。
電話を切った後、不満を誰かに聞いてほしくて、シン太郎左衛門に「明日は有給休暇を取って子守りをすることになってしまった。小学校の六年、五年、二年の三姉妹だ」と言うと、
「うむ、ご苦労」
と、上から目線の、偉そうな返事をするので、ムッとしたが、とりあえず説明を続けた。
「一番上の子には赤ん坊のときに会ったことがあるが、実質的には全員初対面だ。大変に面倒くさい」
「断ればよいものを」
「もう手遅れだ。承諾してしまった。水族館を見学させた後、観覧車に乗せてやることになっている」
「それは楽しそうでござる。拙者も行く」と、シン太郎左衛門、急に目を輝かせた。
「言っておくが、エロい要素は一つもない。三姉妹は小学生だから、変な目で見てはいかん」
シン太郎左衛門は「拙者、ロリコンではござらぬ」と憤然と言い返してきた。
「俺も違う」
「拙者、れもん派でござる」
「俺もだ」
二人は、がっちりと握手を交わした。
「拙者、れもん派の中でも、特に絶対れもん主義を奉じるものでござる」
「俺もだ」
二人は、再びがっちりと握手を交わした。
「拙者、当今、新曲を製作中でござる。題して『絶対れもん主義宣言 様』、またしても名曲でござる」
「いや、お前は名曲を産み出したことは一度もないし、そのタイトルを聞いただけで、不安で一杯になった。まず、普通は、タイトルに様は付けない」
「では、なぜ父上はいつもクチコミの題に様を付けておられまするか」
「勝手に付いてしまうのだ」
「外せない?」
「やり方が分からん」
翌日の昼前、親戚の子供たちはやってきた。呆れるほど人懐っこい子たちだった。人懐っこいのは一般には美徳なのだろうが、私は人見知りなので、お互い自己紹介も済まぬうちにいきなりグイグイ来られると、ガードが固くなってしまう。母親の車で送り届けられ、我が家に入るなり、三姉妹は「おじさん、早く水族館に行こう」「その前にジュースがほしい」「おじさんのウチは、ジュゴン、飼ってるの?」「ジュゴンは無理だよ。でも、ラッコなら飼えるよね?」「わぁ~、ラッコ見たい」「タガメやゲンゴロウ虫も、おウチで飼えるよ」「わたし、アタマ虫、嫌い」とか、代わる代わる、切れ間なくピチピチと喋ってくる。一瞬「おじさんの家には、ラッコもタガメもアタマ虫もいないが、シンタロウ虫ならいるよ」と言おうかと考えたが、彼女たちは、すでに別の話題に移っていた。私のように考えて話していては、彼女たちの会話のリズムに付いていけないことを悟り、今日は1日黙って過ごすことに決めた。
水族館に向かう道中も、ずっと三姉妹は喋り倒し、水族館の中でもハシャギ回していた。フードコートでも喋り続けていた。無邪気で微笑ましかったし、一緒にいて気持ちが和まないでもなかったが、これだけ喋り続けられると、適当に相槌を打って、生返事をするだけなのに、疲労が蓄積していった。
夕暮れが迫ってくると、急いで観覧車に乗って、さっさと家に帰りたくなった。チケット売り場から乗り場までも三姉妹は、やはり喋りまくっている。「観覧車、楽しみ。おじさん、海は見える?」と訊かれた後、「もちろん見えるさ」と答えるまでの間に、「南極、見える?」「ペンギン、いっぱい見える?」と追加の質問が割り込んできて、結果、私は「大阪にある観覧車から南極のペンギンが見えるか」という問いに「もちろん見えるさ」と答える無責任な大人になっていた。順番が来ると、私は三姉妹を押し込むようにワゴンに乗せ、係員に同乗するように言われても、「嫌だ!俺は次のに乗るんだ!」とゴネまくり、強引に我を通した。彼女たちと観覧車の狭い密室に入れられて、正気のまま出て来れる自信がなかった。
後続のワゴンに乗り、一人で座席に腰を下ろすと、ホッと息を吐いた。シン太郎左衛門が楽しそうに、
「本当に賑やかな娘さんたちでござる」
「これは、たまらん。俺は静穏な環境でなければ生きていけない虚弱な生き物なのだ」
「いや。可愛いものでござる。きっと、れもんちゃんも、こんな元気なお子でござったに違いない」
疲れ果てて、窓の外の景色を見る気にもならなかった。
「当然、れもんちゃんは、子供の頃、元気で可愛いかっただろう。ただ、それはそれ、これはこれだ」
「うむ。可愛く、元気なだけでなく、美しく、楽しく、エロく、そして大人の落ち着きも兼ね備えていなければ、れもんちゃんのような宇宙一にはなれぬ」
「そのとおりだ。ただ、それは小学生に求めるべきことではない」
「うむ。ところで、れもんちゃんは、今週、女の子休みでござる。今日あたり美容院に行ったに違いござらぬ」
「そうかなぁ。写メ日記には、そんな記事はなかったけどなぁ」
「ん?写メ日記とは、何でござるか」
余計なことを口走ってしまったことに気付いた。シン太郎左衛門には、れもんちゃんの写メ日記のことをぼやかして伝えていた。真実を知ったとき、見せろ、見せろと5分毎にせっつかれるのは目に見えていた。
「気にするな。独り言だ」
「うむ。そう言えば、昨日お話した『絶対れもん主義宣言』、完成してござる。早速歌いまする」
押し売りめいていたが、要らないと言うと、話が写メ日記に戻って来そうな気がしたから、「そうか。歌ってみろ」と言った。
「では、心してお聴きくだされ」
「絶対れもん主義宣言」は、ショボいリズムボックス風のイントロで始まった。歌詞は大体次のような感じだった。
ビッ! ビッ、ビッ、ビッ!! ×4
美容院に行ったよ~ん
宇宙空母で行ったよ~ん
ミサイル、レーザー撃ちまくり
流星ドッサリ潰したよ~ん
髪をチョキチョキ切ったよ~ん
太陽系を後にして、すぐ
宇宙海賊、攻めてきた(いやん)
迎撃ミサイル発射だよ~ん
トリートメント、完璧だよ~ん
海賊船が逃げてくよ~ん
レーザービームで追い回し
惑星もろとも爆破だよ~ん
れもんちゃんは優しい子
悪い奴らは許さない
れもんちゃんは楽しい子
髪の毛サラサラ、いい匂い
我ら、シン太郎左衛門ズ ×2
ワンコーラス聞き終えたところで一旦止めた。
「何番まであるの?」
「3番までござる」
「今日は、とりあえず、ここまででいいや」
シン太郎左衛門は不満げだったが、三姉妹と甲乙つけがたいほど、聞いてて疲れる代物だった。
「曲調が、まるで昔のテクノポップみたいだ。ラップには聞こえない」
「それは、拙者には、どうでもいいことでござる」
「お前、ラッパーになるんじゃないのかよ」
「拙者は絶対れもん主義者でござる。目的に達するための手段は選ばぬ。ラップだろうが、音頭だろうが、れもん道を邁進するのみ」
「そう言うわりには、お前の曲、最近、雑くないか?ドラム演奏も手抜きっぽい」
「なんの。今回の曲で、出だしの『ビッ』は、れもんちゃんの『美』を語ってござる。その『ビッ』は4個で1セットで、計4セットある。4は『よ~ん』と通じてござる。大変に凝っている」
聞いてるうちに、何だか面倒くさくなってしまい、
「そうか、それは気付かなかった。隅々まで配慮が及んでるな。とにかく美がいっぱいだ」
「うむ。れもんちゃんは、美に満ち溢れてござる」
「それは、そうだ。ホントに唯一無二の素晴らしい女の子だ」
「うむ。では、二番を」
「いや、それは勘弁してほしい」
そう言ったとき、ふと窓の外に目が行った。
「いや、聴いてもらおう」と言って、シン太郎左衛門が、またリズムボックスを鳴らすのを制して、「見ろ」と窓の外を指差した。
ズボンのチャックを内側から開き、頭をもたげたシン太郎左衛門は、私の指の先に目をやり、
「あっ、宇宙空母!!れもんちゃんでござる!!」
夕焼けをバックに、れもんちゃんの空飛ぶ空母は、その巨大すぎるシルエットを大阪湾上空でゆっくりと移動させていた。
「大きいな~。この前よりも、更に一回り大きくなった気が致しまする。れもんちゃんは成長著しい。きっと美容院からの御帰還でござるな」
「いや、今回は単に散歩かもしれん。いずれにしても、敬礼しよう」
二人はビシッと敬礼を決めた。
「実に美しいものでござる。れもんちゃんに属するものは、すべて美しい」
二人は感動の余り、半ば呆然と宇宙空母を見詰め続けた。
帰りの電車に乗ると、私は三姉妹の母親のLINEに、自宅の最寄り駅への到着予定時刻を送った。乗り換えが2回あったが、乗車時間が最も長い電車で幸いにも座ることができた。座った途端に睡魔に襲われたが、隣で三姉妹がずっとペチャクチャ喋って、ゲタゲタ笑っていたので、完全に眠りに落ちることはなく、半醒半睡で過ごした。
私の自宅の最寄り駅に着き、改札から出るとき、三姉妹の上の子が、「おじさんって、いっこく堂みたいだね」と言った。まだ頭が半分眠っている感じで、(「いっこく堂」ってラーメン屋だっけ?)と思うばかりで、意味が理解できなかった。
駅前のロータリーには三姉妹の母親の車が停まっていた。「さあ、お母さんが待ってるよ」と言うと、それまでハシャギ続けていた三姉妹は黙ってしまった。そして、一番下の子が私の腰に抱き付いて、泣き出した。
「一緒に行こう、DJ左衛門。一緒に行こう」
さっきの「いっこく堂」の意味が朧気ながら分かってきた。
三姉妹を宥めすかして、車に乗せた。「また、来ていい?」と訊かれたから、「いいよ」と答えた。車が出発すると、三姉妹は手を振りながら、しばらく「DJ左衛門、バイバイ」「おじさん、バイバイ」と連呼していたが、信号が青になり車が国道に合流するときには、車中から「ビッ!ビッ、ビッ、ビッ!!」という歌声が微かに聞こえてきた。
「シン太郎左衛門、お前、帰りの電車であの子らと話したな」
「うむ。楽しかった」
「俺は腹話術使いだと思われている」
「うむ。腹話術、これを機に学ばれよ」
「いやだ。その上、歌まで教えたな」
「うむ。子供は覚えが速い。すぐに歌えるようになってござる。可愛いものでござる」
「うん・・・結局なんやかんやで楽しかった」
「うむ。それもこれも、れもんちゃんのお蔭でござる」
「よく分からんが、多分そうだ」
家に向かって歩き出したが、急に静かになったのが妙に寂しかった。
「寒くなった」
「うむ」
「三姉妹は今まさに『絶対れもん主義宣言』を合唱しているだろう。手遅れかもしれんが、一応訊いておく。結構重要な話だ。『絶対れもん主義宣言』の2番と3番に、『丸いお尻にTバック』とか、オッパイがどうとかって歌詞、入ってないよな?」
シン太郎左衛門は、しばらく考えた後、「『それは言えない。ヒミツだもん』」
そして、今日、れもんちゃんに会ってきた。当然、宇宙一だった。
なお、あの日以来、「ビッ!ビッ、ビッ、ビッ!!」が耳から離れなくて困っている。
シン太郎左衛門の『絶対れもん主義宣言』様ありがとうございました。
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ご来店日 2023年11月12日
さて、家の固定電話が鳴っても取らぬ主義だが、先週の某日、その日に限って魔が差して、うっかり出てしまった。その結果、親戚の子供を1日預かることになった。
電話を切った後、不満を誰かに聞いてほしくて、シン太郎左衛門に「明日は有給休暇を取って子守りをすることになってしまった。小学校の六年、五年、二年の三姉妹だ」と言うと、
「うむ、ご苦労」
と、上から目線の、偉そうな返事をするので、ムッとしたが、とりあえず説明を続けた。
「一番上の子には赤ん坊のときに会ったことがあるが、実質的には全員初対面だ。大変に面倒くさい」
「断ればよいものを」
「もう手遅れだ。承諾してしまった。水族館を見学させた後、観覧車に乗せてやることになっている」
「それは楽しそうでござる。拙者も行く」と、シン太郎左衛門、急に目を輝かせた。
「言っておくが、エロい要素は一つもない。三姉妹は小学生だから、変な目で見てはいかん」
シン太郎左衛門は「拙者、ロリコンではござらぬ」と憤然と言い返してきた。
「俺も違う」
「拙者、れもん派でござる」
「俺もだ」
二人は、がっちりと握手を交わした。
「拙者、れもん派の中でも、特に絶対れもん主義を奉じるものでござる」
「俺もだ」
二人は、再びがっちりと握手を交わした。
「拙者、当今、新曲を製作中でござる。題して『絶対れもん主義宣言 様』、またしても名曲でござる」
「いや、お前は名曲を産み出したことは一度もないし、そのタイトルを聞いただけで、不安で一杯になった。まず、普通は、タイトルに様は付けない」
「では、なぜ父上はいつもクチコミの題に様を付けておられまするか」
「勝手に付いてしまうのだ」
「外せない?」
「やり方が分からん」
翌日の昼前、親戚の子供たちはやってきた。呆れるほど人懐っこい子たちだった。人懐っこいのは一般には美徳なのだろうが、私は人見知りなので、お互い自己紹介も済まぬうちにいきなりグイグイ来られると、ガードが固くなってしまう。母親の車で送り届けられ、我が家に入るなり、三姉妹は「おじさん、早く水族館に行こう」「その前にジュースがほしい」「おじさんのウチは、ジュゴン、飼ってるの?」「ジュゴンは無理だよ。でも、ラッコなら飼えるよね?」「わぁ~、ラッコ見たい」「タガメやゲンゴロウ虫も、おウチで飼えるよ」「わたし、アタマ虫、嫌い」とか、代わる代わる、切れ間なくピチピチと喋ってくる。一瞬「おじさんの家には、ラッコもタガメもアタマ虫もいないが、シンタロウ虫ならいるよ」と言おうかと考えたが、彼女たちは、すでに別の話題に移っていた。私のように考えて話していては、彼女たちの会話のリズムに付いていけないことを悟り、今日は1日黙って過ごすことに決めた。
水族館に向かう道中も、ずっと三姉妹は喋り倒し、水族館の中でもハシャギ回していた。フードコートでも喋り続けていた。無邪気で微笑ましかったし、一緒にいて気持ちが和まないでもなかったが、これだけ喋り続けられると、適当に相槌を打って、生返事をするだけなのに、疲労が蓄積していった。
夕暮れが迫ってくると、急いで観覧車に乗って、さっさと家に帰りたくなった。チケット売り場から乗り場までも三姉妹は、やはり喋りまくっている。「観覧車、楽しみ。おじさん、海は見える?」と訊かれた後、「もちろん見えるさ」と答えるまでの間に、「南極、見える?」「ペンギン、いっぱい見える?」と追加の質問が割り込んできて、結果、私は「大阪にある観覧車から南極のペンギンが見えるか」という問いに「もちろん見えるさ」と答える無責任な大人になっていた。順番が来ると、私は三姉妹を押し込むようにワゴンに乗せ、係員に同乗するように言われても、「嫌だ!俺は次のに乗るんだ!」とゴネまくり、強引に我を通した。彼女たちと観覧車の狭い密室に入れられて、正気のまま出て来れる自信がなかった。
後続のワゴンに乗り、一人で座席に腰を下ろすと、ホッと息を吐いた。シン太郎左衛門が楽しそうに、
「本当に賑やかな娘さんたちでござる」
「これは、たまらん。俺は静穏な環境でなければ生きていけない虚弱な生き物なのだ」
「いや。可愛いものでござる。きっと、れもんちゃんも、こんな元気なお子でござったに違いない」
疲れ果てて、窓の外の景色を見る気にもならなかった。
「当然、れもんちゃんは、子供の頃、元気で可愛いかっただろう。ただ、それはそれ、これはこれだ」
「うむ。可愛く、元気なだけでなく、美しく、楽しく、エロく、そして大人の落ち着きも兼ね備えていなければ、れもんちゃんのような宇宙一にはなれぬ」
「そのとおりだ。ただ、それは小学生に求めるべきことではない」
「うむ。ところで、れもんちゃんは、今週、女の子休みでござる。今日あたり美容院に行ったに違いござらぬ」
「そうかなぁ。写メ日記には、そんな記事はなかったけどなぁ」
「ん?写メ日記とは、何でござるか」
余計なことを口走ってしまったことに気付いた。シン太郎左衛門には、れもんちゃんの写メ日記のことをぼやかして伝えていた。真実を知ったとき、見せろ、見せろと5分毎にせっつかれるのは目に見えていた。
「気にするな。独り言だ」
「うむ。そう言えば、昨日お話した『絶対れもん主義宣言』、完成してござる。早速歌いまする」
押し売りめいていたが、要らないと言うと、話が写メ日記に戻って来そうな気がしたから、「そうか。歌ってみろ」と言った。
「では、心してお聴きくだされ」
「絶対れもん主義宣言」は、ショボいリズムボックス風のイントロで始まった。歌詞は大体次のような感じだった。
ビッ! ビッ、ビッ、ビッ!! ×4
美容院に行ったよ~ん
宇宙空母で行ったよ~ん
ミサイル、レーザー撃ちまくり
流星ドッサリ潰したよ~ん
髪をチョキチョキ切ったよ~ん
太陽系を後にして、すぐ
宇宙海賊、攻めてきた(いやん)
迎撃ミサイル発射だよ~ん
トリートメント、完璧だよ~ん
海賊船が逃げてくよ~ん
レーザービームで追い回し
惑星もろとも爆破だよ~ん
れもんちゃんは優しい子
悪い奴らは許さない
れもんちゃんは楽しい子
髪の毛サラサラ、いい匂い
我ら、シン太郎左衛門ズ ×2
ワンコーラス聞き終えたところで一旦止めた。
「何番まであるの?」
「3番までござる」
「今日は、とりあえず、ここまででいいや」
シン太郎左衛門は不満げだったが、三姉妹と甲乙つけがたいほど、聞いてて疲れる代物だった。
「曲調が、まるで昔のテクノポップみたいだ。ラップには聞こえない」
「それは、拙者には、どうでもいいことでござる」
「お前、ラッパーになるんじゃないのかよ」
「拙者は絶対れもん主義者でござる。目的に達するための手段は選ばぬ。ラップだろうが、音頭だろうが、れもん道を邁進するのみ」
「そう言うわりには、お前の曲、最近、雑くないか?ドラム演奏も手抜きっぽい」
「なんの。今回の曲で、出だしの『ビッ』は、れもんちゃんの『美』を語ってござる。その『ビッ』は4個で1セットで、計4セットある。4は『よ~ん』と通じてござる。大変に凝っている」
聞いてるうちに、何だか面倒くさくなってしまい、
「そうか、それは気付かなかった。隅々まで配慮が及んでるな。とにかく美がいっぱいだ」
「うむ。れもんちゃんは、美に満ち溢れてござる」
「それは、そうだ。ホントに唯一無二の素晴らしい女の子だ」
「うむ。では、二番を」
「いや、それは勘弁してほしい」
そう言ったとき、ふと窓の外に目が行った。
「いや、聴いてもらおう」と言って、シン太郎左衛門が、またリズムボックスを鳴らすのを制して、「見ろ」と窓の外を指差した。
ズボンのチャックを内側から開き、頭をもたげたシン太郎左衛門は、私の指の先に目をやり、
「あっ、宇宙空母!!れもんちゃんでござる!!」
夕焼けをバックに、れもんちゃんの空飛ぶ空母は、その巨大すぎるシルエットを大阪湾上空でゆっくりと移動させていた。
「大きいな~。この前よりも、更に一回り大きくなった気が致しまする。れもんちゃんは成長著しい。きっと美容院からの御帰還でござるな」
「いや、今回は単に散歩かもしれん。いずれにしても、敬礼しよう」
二人はビシッと敬礼を決めた。
「実に美しいものでござる。れもんちゃんに属するものは、すべて美しい」
二人は感動の余り、半ば呆然と宇宙空母を見詰め続けた。
帰りの電車に乗ると、私は三姉妹の母親のLINEに、自宅の最寄り駅への到着予定時刻を送った。乗り換えが2回あったが、乗車時間が最も長い電車で幸いにも座ることができた。座った途端に睡魔に襲われたが、隣で三姉妹がずっとペチャクチャ喋って、ゲタゲタ笑っていたので、完全に眠りに落ちることはなく、半醒半睡で過ごした。
私の自宅の最寄り駅に着き、改札から出るとき、三姉妹の上の子が、「おじさんって、いっこく堂みたいだね」と言った。まだ頭が半分眠っている感じで、(「いっこく堂」ってラーメン屋だっけ?)と思うばかりで、意味が理解できなかった。
駅前のロータリーには三姉妹の母親の車が停まっていた。「さあ、お母さんが待ってるよ」と言うと、それまでハシャギ続けていた三姉妹は黙ってしまった。そして、一番下の子が私の腰に抱き付いて、泣き出した。
「一緒に行こう、DJ左衛門。一緒に行こう」
さっきの「いっこく堂」の意味が朧気ながら分かってきた。
三姉妹を宥めすかして、車に乗せた。「また、来ていい?」と訊かれたから、「いいよ」と答えた。車が出発すると、三姉妹は手を振りながら、しばらく「DJ左衛門、バイバイ」「おじさん、バイバイ」と連呼していたが、信号が青になり車が国道に合流するときには、車中から「ビッ!ビッ、ビッ、ビッ!!」という歌声が微かに聞こえてきた。
「シン太郎左衛門、お前、帰りの電車であの子らと話したな」
「うむ。楽しかった」
「俺は腹話術使いだと思われている」
「うむ。腹話術、これを機に学ばれよ」
「いやだ。その上、歌まで教えたな」
「うむ。子供は覚えが速い。すぐに歌えるようになってござる。可愛いものでござる」
「うん・・・結局なんやかんやで楽しかった」
「うむ。それもこれも、れもんちゃんのお蔭でござる」
「よく分からんが、多分そうだ」
家に向かって歩き出したが、急に静かになったのが妙に寂しかった。
「寒くなった」
「うむ」
「三姉妹は今まさに『絶対れもん主義宣言』を合唱しているだろう。手遅れかもしれんが、一応訊いておく。結構重要な話だ。『絶対れもん主義宣言』の2番と3番に、『丸いお尻にTバック』とか、オッパイがどうとかって歌詞、入ってないよな?」
シン太郎左衛門は、しばらく考えた後、「『それは言えない。ヒミツだもん』」
そして、今日、れもんちゃんに会ってきた。当然、宇宙一だった。
なお、あの日以来、「ビッ!ビッ、ビッ、ビッ!!」が耳から離れなくて困っている。
シン太郎左衛門の『絶対れもん主義宣言』様ありがとうございました。