口コミ│神戸・福原 ソープランド Club Royal (クラブロイヤル)
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れもん【VIP】(23)
れもん【VIP】の口コミだけ見る
投稿者:シン太郎左衛門、図書館に行く 様
ご来店日 2024年10月20日
我が馬鹿息子、シン太郎左衛門は武士である。何の得にもならないのに、毎日、熱心に口笛を吹いているので、かなり腕を上げた。今は、バッハの「無伴奏チェロ組曲」にソックリの旋律を吹いている。結局、何をしたいのか分からない。
昨日は土曜日。れもんちゃんイブ。
早く寝て明日に備えようと、さっさと身支度を整えた。布団に入って、電気を消すと、シン太郎左衛門が「父上、拙者、これから、れもん星に参りまする」と言う。
「そうか。お前一人で行け」
「うむ。拙者一人で行く」
「例の『夢でれもん星に行く魔法』を使うのだろうが、どうせまた砂漠みたいな場所に着いて、ひどい目に遭わされるに決まってる。仮に、れもんちゃんグッズのショップに行けても、れもん星のモノを持って帰れるオプションは既に使ってしまったからな。虚しく手ぶらで帰ってくるのでは悲しすぎる。俺は行かん」
「うむ。では、行って参りまする。『キリンれもん、キリンれもん、キリンれもんちゃん・・・』」
呪文を十回唱えて、シン太郎左衛門はイビキをかき始めた。私も、いつしか眠りに落ちたが、間もなくシン太郎左衛門に起こされた。
「父上、起きてくだされ」
「おい、どういう積もりだ!」
「拙者、れもん星から戻って参った」
「だったら、さっさと寝ろ!明日は、れもんちゃんデーなんだぞ」
「れもん星に行くには行ったが、着いた場所がビジネスホテルの一室でござった。外に出て、街を散策しようとしたが、拙者一人では部屋のドアが開けられなんだ。一緒に付いてきてくだされ」
「嫌だ」
「お頼み申す」
押し問答の結果、結局、説得されてしまった。
二人揃って呪文を唱えて、眠りに落ちた。着いたところは・・・
超高級ホテルのスイートルームだった。
「豪華な部屋だなぁ」
豪華すぎる調度品、窓の外の眺望に感嘆し、寝室の巨大なベッドの上に大の字になってみた後、バスルームに入ってみた。
「見てみろ」とバスタオルをシン太郎左衛門に差し出した。
「『ホテル・インペリアル・れもんちゃん』と刺繍がしてある。れもん星で一番のラグジュアリー・ホテルに違いない」
「うむ。父上は、このタオルが気に入ってござるな」
「その通り。このタオルは、フローラルかつフルーティーでゴージャスな香りがする。まさに、れもんちゃんが漂わせている香りだ。これをれもんちゃんに見せて、ビックリさせよう」
「しかし、持って帰ることは出来ませぬぞ」
「いや、なんと言われようが、このタオルが欲しい。ダメ元で、やってみよう。シン太郎左衛門、起きるぞ」
「無駄だと思いまする」
ホテルのタオル類をかき集めて、抱きかかえ、「よし。シン太郎左衛門、何か大きな声で叫べ」
「うむ・・・れもんちゃ~ん!!」
シン太郎左衛門の叫び声で目を覚ました。部屋の中は真っ暗だった。
「父上、タオルは?」
「・・・しまった。夢の中に置いてきてしまった」
「父上は愚か者でござる」
「それは言われなくても分かってる。シン太郎左衛門、もう一度さっきのホテルに戻ろう」
「何度やっても同じ事でござる」
「違う。タオルの件は諦めた。しかし、ホテル・インペリアル・れもんちゃんのベッドは大変寝心地がよかった。あそこで寝たい。ウチの煎餅布団とは雲泥の差だ」
「だが、父上、行き先には何の保証もありませぬぞ」
「変なところに着いたら、目を覚ませばいい。さあ行くぞ」
二人はまた呪文を唱えた。そして、眠りに落ちて、着いたのは・・・
「ここは・・・デカい図書館だ」
自宅近くの市営図書館より100倍大きな図書館だった。沢山のれもん星人がいた。
「こんな深夜でも沢山の人がいる。れもん星人はみんな読書家だ」
「やはりホテルには戻れなんだ」
「いや、図書館なら文句はない。古代オチン語の教科書を探して、短い時間だが勉強しよう」
「うむ。頭の中にしまったモノは、誰も盗れぬ」
「お前、いいことを言う。その通りだ。限られた時間で、学べるだけ学んで、れもんちゃんをビックリさせる」
やっとのことで、外国語の書架に行き着いた。膨大な数の古代オチン語の教科書が並んでいた。
「こんなに沢山あるのか。凄いなぁ。れもん星での古代オチン語熱は大したものだ。どれにしようかな・・・」
背表紙を眺めていると、数多の本と並んで、本と同程度の大きさの段ボールの箱に何やら印刷されているのを見つけた。そこには、
「大人気 『れもんちゃんと学ぶ 古代オチン語入門』は、『れもんちゃん関連図書コーナー』に移しています」とあった。
「おい、シン太郎左衛門、凄いぞ。れもんちゃんは古代オチン語の教科書を書いているんだ。おまけに、この図書館には、れもんちゃん関連の本を集めた一画があるらしい」
「うむ。それは素晴らしい。楽しそうでござる。早速行きましょうぞ」
その場所はすぐに分かった。「特別閲覧室(れもんちゃんの部屋)」と看板が掲げられていて、入り口では、いつもクラブロイヤルの入り口で愛想よく迎えてくれるスタッフさんにソックリなれもん星人さんが風船を配っていた。二人はそれぞれ赤い風船を浮かせながら、特別閲覧室の敷居を跨いだ。
「実に楽しい気分でござる」
「うん。来てよかったな。見ろ。れもんちゃんに捧げられたスペースだけでも、俺が通った高校の図書室より遥かに広くて立派だ」
シン太郎左衛門は、私のズボンの裾に掴まると、スルスルとよじ登り、私の肩に腰かけた。そして、部屋の中を一望すると、「これ全部が、れもんちゃんに関わる書籍とは、普段れもんちゃんにお世話になっている我々にとっても実に名誉なことでござるな」
「うん。実に感動的だ。ただ、さっきから風船のヒモが頬っぺに当たっている。こしょばいから、止めてくれ」
入ってすぐの一番目立つ場所に大きな陳列棚があり、札が立てられていた。
「大人気『れもんちゃんと学ぶ』シリーズ 全200巻
著者:れもんちゃん
監修:れもんちゃん
イラスト:れもんちゃん
装丁:れもんちゃん」とあった。
思わず「れもんちゃんは、本当に頑張り屋さんだな~。それに比べて、お前も少しは頑張れよ」
「うむ。しかし、『れもんちゃんと学ぶ』シリーズは、全部借りられておる」
「ホントだ」
展示棚に本はなく、それぞれの配架場所に表紙のコピーが貼られていて、赤いマジックで「貸出中」と書かれていた。
「どれどれ、表紙だけでも見てみよう」
と、うち一冊の表紙のコピーを眺めてみると、
「れもんちゃんと学ぶ 初めての卓球」とあり、帯には「ラケットの作り方から楽しく学べるよ~ん」と書いてあった。
「・・・ラケット作りから学ばなければならないのか」
「随分と本格的でござる」
「卓球選手って、自分でラケットを作るのか?そこまでしなければならんのだろうか・・・」
「父上、こっちのはもっと凄い」
シン太郎左衛門が指差す先には、「れもんちゃんと学ぶ やさしいジャズピアノ」とあり、帯には「基礎(ピアノの作り方)から楽しく学んじゃうよ~ん」とあった。
「ピアノまで作っちゃうのか・・・れもんちゃんの拘りは凄いなぁ」
「実に遠大な計画でござる」
「これは、俺には無理だ。俺に残された時間はわずかだ。この本でジャズピアノを学び始めたら、ピアノを作り終える前に死んでしまう。一曲も弾けるようにならない」
「やはり、れもんちゃんは只者ではござらぬ。こちらには、『れもんちゃんと学ぶ 誰でもできるおウチのお片付け』がござる。帯は付いておらぬが、おそらく家を建てるところから始めるものと思われまする」
「れもん星人って、寿命が凄く長いのかなぁ」
「うむ。れもんちゃんは永遠に不滅でござる」
結局、沢山本が並んでいると思ったのは錯覚で、「貸出中」と上書きされた表紙のコピーばかりだった。「れもんちゃんと学ぶ」シリーズ全200巻だけでなく、れもんちゃんの自伝「結局全部ヒミツだよ~ん」も、スイーツ・グルメレポート「完食そして大満足」も、表紙を見ているだけで優しい気持ちに包まれる絵本「光と風と脚長ワンちゃん」も、現物は一冊もなかった。二人は落胆の余り、溜め息を吐いた。
「れもんちゃんは、作家としても大人気すぎる。俺たちに与えられたのは、表紙ばかりだ」
「どれも気になるが、拙者、脚長ワンちゃんの絵本はどうしても読みたかった」
「俺は、れもんちゃんの自伝が気になってしょうがない」
ちなみに「完食そして大満足」については、帯に「れもん星の観光大臣ちゃんも大絶賛!!」とあったので、「これは、いわゆる自画自賛に当たる恐れがある」と親子でヒソヒソ話をした。
れもんちゃん作品が全部借りられていて、すっかり気落ちしかかったとき、シン太郎左衛門が、「あっ、あちらに借りられていない本がありまする」と叫んだ。
首が捻挫するほど、勢いよく振り返って見たが、そこに置かれた本はどこか様子が違っていた。
「・・・ここにあるのは、れもんちゃんの本じゃない。『れもんちゃんにゆかりのある人たちの本』のコーナーだ・・・『武士の手料理 おむすび編』、『武士の手料理 お稲荷さん編』、くだらん本だなぁ・・・筆者の名前は書いてないが、もしかして、作者はお前か?」
シン太郎左衛門は、吐き捨てるように、「拙者、本など書いたことはない」
「武士の手料理 おむすび編」を手にとり表紙を捲ってみた。
「なんだ、これ。本文が2ページしかない。それも大半が下手くそなイラストだ・・・お前の本だろ」
「違う!」
「武士の手料理 おむすび編」を棚に戻そうとしながら、隣の本に目が止まった。「あっ!これは、富士山シン太郎左衛門 作と書いてあるぞ。帯に『武士の手料理』の著者による下品極まりない官能小説、と書いてあるじゃないか!タイトルは『そもそも、れもんちゃんのオッパイは・・・』って、お前、最低だな」
「このようなものを書いた覚えはござらぬ。そもそも、我々、今夢を見ておるのでござる。所詮、これは夢の話でござる」
「普段からイヤらしいことばかり考えているから、こんなことになるのだ」
富士山シン太郎左衛門著「そもそも、れもんちゃんのオッパイは・・・」を手に取ってみた。異様に重たかった。
「なんだ、これ?辞書みたいに分厚いが、全ページ、開けないようにガチガチに糊付けされてる。まるでレンガだ。それに『有害図書』のスタンプが押されてる。お前、れもん星で、どれだけ厄介者扱いされてるんだ!」
「まったくの濡れ衣でござる」
「だから普段から言ってるだろ!お前の考えていることをそのまま書いたら不掲載になるって」
「拙者は悪くない!」
「うるさい!こんな不名誉な本を出しやがって。れもんちゃんに申し訳が立たん。切腹しろ!」
シン太郎左衛門は、顔を真っ赤に上気させ、
「いやだっ!!そんなことをしたら、れもんちゃんに会えなくなるじゃないかっ!!」
シン太郎左衛門の叫び声で目を覚ましてしまった。
部屋の中は、真っ暗だった。
そして、翌日、日曜日、れもんちゃんデー。
我々親子は、ウキウキとして、れもんちゃんに逢いに行った(もちろんJRの新快速だよ~ん)。
れもんちゃんは余りにも宇宙一に宇宙一で、我々は感動のブラックホールに吸い込まれていった。
帰り際、れもんちゃんに、「ところで、シン太郎左衛門の本の件では、迷惑かけてゴメンね」と言うと、れもんちゃんは少し表情を変え、唇の前に人差し指を立てて、「その話は絶対にヒミツだよ」と言った。
れもんちゃんの少し慌てた様子もまた宇宙一可愛いのであった。
ということで、今回のクチコミ、書くには書いたが、公開には余りにも大きな問題がありそうだ。一応投稿するが、ほぼ確実に不掲載となるだろう。
シン太郎左衛門、図書館に行く 様ありがとうございました。
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投稿者:シン太郎左衛門、図書館に行く 様
ご来店日 2024年10月20日
昨日は土曜日。れもんちゃんイブ。
早く寝て明日に備えようと、さっさと身支度を整えた。布団に入って、電気を消すと、シン太郎左衛門が「父上、拙者、これから、れもん星に参りまする」と言う。
「そうか。お前一人で行け」
「うむ。拙者一人で行く」
「例の『夢でれもん星に行く魔法』を使うのだろうが、どうせまた砂漠みたいな場所に着いて、ひどい目に遭わされるに決まってる。仮に、れもんちゃんグッズのショップに行けても、れもん星のモノを持って帰れるオプションは既に使ってしまったからな。虚しく手ぶらで帰ってくるのでは悲しすぎる。俺は行かん」
「うむ。では、行って参りまする。『キリンれもん、キリンれもん、キリンれもんちゃん・・・』」
呪文を十回唱えて、シン太郎左衛門はイビキをかき始めた。私も、いつしか眠りに落ちたが、間もなくシン太郎左衛門に起こされた。
「父上、起きてくだされ」
「おい、どういう積もりだ!」
「拙者、れもん星から戻って参った」
「だったら、さっさと寝ろ!明日は、れもんちゃんデーなんだぞ」
「れもん星に行くには行ったが、着いた場所がビジネスホテルの一室でござった。外に出て、街を散策しようとしたが、拙者一人では部屋のドアが開けられなんだ。一緒に付いてきてくだされ」
「嫌だ」
「お頼み申す」
押し問答の結果、結局、説得されてしまった。
二人揃って呪文を唱えて、眠りに落ちた。着いたところは・・・
超高級ホテルのスイートルームだった。
「豪華な部屋だなぁ」
豪華すぎる調度品、窓の外の眺望に感嘆し、寝室の巨大なベッドの上に大の字になってみた後、バスルームに入ってみた。
「見てみろ」とバスタオルをシン太郎左衛門に差し出した。
「『ホテル・インペリアル・れもんちゃん』と刺繍がしてある。れもん星で一番のラグジュアリー・ホテルに違いない」
「うむ。父上は、このタオルが気に入ってござるな」
「その通り。このタオルは、フローラルかつフルーティーでゴージャスな香りがする。まさに、れもんちゃんが漂わせている香りだ。これをれもんちゃんに見せて、ビックリさせよう」
「しかし、持って帰ることは出来ませぬぞ」
「いや、なんと言われようが、このタオルが欲しい。ダメ元で、やってみよう。シン太郎左衛門、起きるぞ」
「無駄だと思いまする」
ホテルのタオル類をかき集めて、抱きかかえ、「よし。シン太郎左衛門、何か大きな声で叫べ」
「うむ・・・れもんちゃ~ん!!」
シン太郎左衛門の叫び声で目を覚ました。部屋の中は真っ暗だった。
「父上、タオルは?」
「・・・しまった。夢の中に置いてきてしまった」
「父上は愚か者でござる」
「それは言われなくても分かってる。シン太郎左衛門、もう一度さっきのホテルに戻ろう」
「何度やっても同じ事でござる」
「違う。タオルの件は諦めた。しかし、ホテル・インペリアル・れもんちゃんのベッドは大変寝心地がよかった。あそこで寝たい。ウチの煎餅布団とは雲泥の差だ」
「だが、父上、行き先には何の保証もありませぬぞ」
「変なところに着いたら、目を覚ませばいい。さあ行くぞ」
二人はまた呪文を唱えた。そして、眠りに落ちて、着いたのは・・・
「ここは・・・デカい図書館だ」
自宅近くの市営図書館より100倍大きな図書館だった。沢山のれもん星人がいた。
「こんな深夜でも沢山の人がいる。れもん星人はみんな読書家だ」
「やはりホテルには戻れなんだ」
「いや、図書館なら文句はない。古代オチン語の教科書を探して、短い時間だが勉強しよう」
「うむ。頭の中にしまったモノは、誰も盗れぬ」
「お前、いいことを言う。その通りだ。限られた時間で、学べるだけ学んで、れもんちゃんをビックリさせる」
やっとのことで、外国語の書架に行き着いた。膨大な数の古代オチン語の教科書が並んでいた。
「こんなに沢山あるのか。凄いなぁ。れもん星での古代オチン語熱は大したものだ。どれにしようかな・・・」
背表紙を眺めていると、数多の本と並んで、本と同程度の大きさの段ボールの箱に何やら印刷されているのを見つけた。そこには、
「大人気 『れもんちゃんと学ぶ 古代オチン語入門』は、『れもんちゃん関連図書コーナー』に移しています」とあった。
「おい、シン太郎左衛門、凄いぞ。れもんちゃんは古代オチン語の教科書を書いているんだ。おまけに、この図書館には、れもんちゃん関連の本を集めた一画があるらしい」
「うむ。それは素晴らしい。楽しそうでござる。早速行きましょうぞ」
その場所はすぐに分かった。「特別閲覧室(れもんちゃんの部屋)」と看板が掲げられていて、入り口では、いつもクラブロイヤルの入り口で愛想よく迎えてくれるスタッフさんにソックリなれもん星人さんが風船を配っていた。二人はそれぞれ赤い風船を浮かせながら、特別閲覧室の敷居を跨いだ。
「実に楽しい気分でござる」
「うん。来てよかったな。見ろ。れもんちゃんに捧げられたスペースだけでも、俺が通った高校の図書室より遥かに広くて立派だ」
シン太郎左衛門は、私のズボンの裾に掴まると、スルスルとよじ登り、私の肩に腰かけた。そして、部屋の中を一望すると、「これ全部が、れもんちゃんに関わる書籍とは、普段れもんちゃんにお世話になっている我々にとっても実に名誉なことでござるな」
「うん。実に感動的だ。ただ、さっきから風船のヒモが頬っぺに当たっている。こしょばいから、止めてくれ」
入ってすぐの一番目立つ場所に大きな陳列棚があり、札が立てられていた。
「大人気『れもんちゃんと学ぶ』シリーズ 全200巻
著者:れもんちゃん
監修:れもんちゃん
イラスト:れもんちゃん
装丁:れもんちゃん」とあった。
思わず「れもんちゃんは、本当に頑張り屋さんだな~。それに比べて、お前も少しは頑張れよ」
「うむ。しかし、『れもんちゃんと学ぶ』シリーズは、全部借りられておる」
「ホントだ」
展示棚に本はなく、それぞれの配架場所に表紙のコピーが貼られていて、赤いマジックで「貸出中」と書かれていた。
「どれどれ、表紙だけでも見てみよう」
と、うち一冊の表紙のコピーを眺めてみると、
「れもんちゃんと学ぶ 初めての卓球」とあり、帯には「ラケットの作り方から楽しく学べるよ~ん」と書いてあった。
「・・・ラケット作りから学ばなければならないのか」
「随分と本格的でござる」
「卓球選手って、自分でラケットを作るのか?そこまでしなければならんのだろうか・・・」
「父上、こっちのはもっと凄い」
シン太郎左衛門が指差す先には、「れもんちゃんと学ぶ やさしいジャズピアノ」とあり、帯には「基礎(ピアノの作り方)から楽しく学んじゃうよ~ん」とあった。
「ピアノまで作っちゃうのか・・・れもんちゃんの拘りは凄いなぁ」
「実に遠大な計画でござる」
「これは、俺には無理だ。俺に残された時間はわずかだ。この本でジャズピアノを学び始めたら、ピアノを作り終える前に死んでしまう。一曲も弾けるようにならない」
「やはり、れもんちゃんは只者ではござらぬ。こちらには、『れもんちゃんと学ぶ 誰でもできるおウチのお片付け』がござる。帯は付いておらぬが、おそらく家を建てるところから始めるものと思われまする」
「れもん星人って、寿命が凄く長いのかなぁ」
「うむ。れもんちゃんは永遠に不滅でござる」
結局、沢山本が並んでいると思ったのは錯覚で、「貸出中」と上書きされた表紙のコピーばかりだった。「れもんちゃんと学ぶ」シリーズ全200巻だけでなく、れもんちゃんの自伝「結局全部ヒミツだよ~ん」も、スイーツ・グルメレポート「完食そして大満足」も、表紙を見ているだけで優しい気持ちに包まれる絵本「光と風と脚長ワンちゃん」も、現物は一冊もなかった。二人は落胆の余り、溜め息を吐いた。
「れもんちゃんは、作家としても大人気すぎる。俺たちに与えられたのは、表紙ばかりだ」
「どれも気になるが、拙者、脚長ワンちゃんの絵本はどうしても読みたかった」
「俺は、れもんちゃんの自伝が気になってしょうがない」
ちなみに「完食そして大満足」については、帯に「れもん星の観光大臣ちゃんも大絶賛!!」とあったので、「これは、いわゆる自画自賛に当たる恐れがある」と親子でヒソヒソ話をした。
れもんちゃん作品が全部借りられていて、すっかり気落ちしかかったとき、シン太郎左衛門が、「あっ、あちらに借りられていない本がありまする」と叫んだ。
首が捻挫するほど、勢いよく振り返って見たが、そこに置かれた本はどこか様子が違っていた。
「・・・ここにあるのは、れもんちゃんの本じゃない。『れもんちゃんにゆかりのある人たちの本』のコーナーだ・・・『武士の手料理 おむすび編』、『武士の手料理 お稲荷さん編』、くだらん本だなぁ・・・筆者の名前は書いてないが、もしかして、作者はお前か?」
シン太郎左衛門は、吐き捨てるように、「拙者、本など書いたことはない」
「武士の手料理 おむすび編」を手にとり表紙を捲ってみた。
「なんだ、これ。本文が2ページしかない。それも大半が下手くそなイラストだ・・・お前の本だろ」
「違う!」
「武士の手料理 おむすび編」を棚に戻そうとしながら、隣の本に目が止まった。「あっ!これは、富士山シン太郎左衛門 作と書いてあるぞ。帯に『武士の手料理』の著者による下品極まりない官能小説、と書いてあるじゃないか!タイトルは『そもそも、れもんちゃんのオッパイは・・・』って、お前、最低だな」
「このようなものを書いた覚えはござらぬ。そもそも、我々、今夢を見ておるのでござる。所詮、これは夢の話でござる」
「普段からイヤらしいことばかり考えているから、こんなことになるのだ」
富士山シン太郎左衛門著「そもそも、れもんちゃんのオッパイは・・・」を手に取ってみた。異様に重たかった。
「なんだ、これ?辞書みたいに分厚いが、全ページ、開けないようにガチガチに糊付けされてる。まるでレンガだ。それに『有害図書』のスタンプが押されてる。お前、れもん星で、どれだけ厄介者扱いされてるんだ!」
「まったくの濡れ衣でござる」
「だから普段から言ってるだろ!お前の考えていることをそのまま書いたら不掲載になるって」
「拙者は悪くない!」
「うるさい!こんな不名誉な本を出しやがって。れもんちゃんに申し訳が立たん。切腹しろ!」
シン太郎左衛門は、顔を真っ赤に上気させ、
「いやだっ!!そんなことをしたら、れもんちゃんに会えなくなるじゃないかっ!!」
シン太郎左衛門の叫び声で目を覚ましてしまった。
部屋の中は、真っ暗だった。
そして、翌日、日曜日、れもんちゃんデー。
我々親子は、ウキウキとして、れもんちゃんに逢いに行った(もちろんJRの新快速だよ~ん)。
れもんちゃんは余りにも宇宙一に宇宙一で、我々は感動のブラックホールに吸い込まれていった。
帰り際、れもんちゃんに、「ところで、シン太郎左衛門の本の件では、迷惑かけてゴメンね」と言うと、れもんちゃんは少し表情を変え、唇の前に人差し指を立てて、「その話は絶対にヒミツだよ」と言った。
れもんちゃんの少し慌てた様子もまた宇宙一可愛いのであった。
ということで、今回のクチコミ、書くには書いたが、公開には余りにも大きな問題がありそうだ。一応投稿するが、ほぼ確実に不掲載となるだろう。
シン太郎左衛門、図書館に行く 様ありがとうございました。