ご来店日 2024年11月13日
フジイくん様ありがとうございました。
ご来店日 2024年11月10日
シン太郎左衛門とれもん星の思い出 様ありがとうございました。
ご来店日 2024年11月03日
シン太郎左衛門と守護霊さん 様ありがとうございました。
ご来店日 2024年10月20日
シン太郎左衛門と『おとぼけ観光大臣ちゃん』(あるいは『選挙の季節』) 様ありがとうございました。
ご来店日 2024年10月24日
修行様ありがとうございました。
ご来店日 2024年10月23日
40歳には見えない様ありがとうございました。
ご来店日 2024年10月20日
シン太郎左衛門、図書館に行く 様ありがとうございました。
ご来店日 2024年10月17日
キタハラ様ありがとうございました。
ご来店日 2024年10月13日
シン太郎左衛門と『父上の正体』(あるいは「ウーパールーパーは電気オヤジの夢を見るのか」) 様ありがとうございました。
投稿者:シン太郎左衛門とカシワ鍋(あるいは「父上の勘違い」) 様
ご来店日 2024年11月17日
昨日は土曜日、れもんちゃんイブ。
最近、外食が続き、何となく肥えてきた気もするし、何となく体調もおかしい。久し振りに自宅で料理をすることに決めたが、お得意の「王さんの中華レシピ」では外食で食べているものと変わり映えがしない。
取り敢えず和食にすることを決めて、夕方、近くの駅前のスーパーに到着後、30分以上ウロウロと歩き回ったが、カゴはカラのままだった。
特設コーナーで高校生ぐらいの女の子が、余りの緊張に声を震わせながら、「美味しい明太子、とっても美味しい明太子、ご夕食に明太子はいかがですか。晩酌のアテに明太子はいかがですか。明日の朝食に明太子トースト、お昼に明太子パスタ、3時のオヤツに明太子はいかがですか」と、理不尽なまでの明太子ヘビーローテーションをゴリ押ししてくるのが微笑ましくて、1パック、カゴに入れたが、後が続かなかった。
「シン太郎左衛門、このままだと、今夜は明太子ご飯だけになってしまう。何かヘルシーでライトなオススメ料理はないか?」
「うむ。このところ、めっきり寒くなって参った。鍋になされよ」
「そうか・・・それはありだな。去年、卓上コンロを買ったが結局一度も使ってないしな」
「新品の土鍋もありまする」
「お〜、そうだった。金ちゃんが、動画サイトで見た猫鍋というのが可愛くて、モンちゃんにやらせようと土鍋を買ったが、見向きもされなかったらしい。部屋にあっても邪魔なだけだから、もらってほしいと言われて、もらってやった」
「卓上コンロ殿と土鍋殿は現在家の台所でホコリをかぶっておられる」
「うん。彼らを使おう。苦節1年、卓上コンロと土鍋のコンビは、本日、晴れてデビューすることになった」
「うむ。で、彼らのデビュー曲のタイトルは?」
「そうさなぁ・・・」
最近、二人の間で、私が出した曲名に合わせ、シン太郎左衛門が即興で歌うという下らない暇潰しが流行っていた。
「演歌っぽく、『オチンと一人鍋』にしよう」
「うむ。では歌わせて頂こう」
口笛によるイントロが始まったが、明らかにブルース・スプリングスティーンの『明日なき暴走』(Born to run)のパクリだった。
昼は会社のオフィス、眠たい目をして、
夢見るれもんちゃんドリーム
夜は卓上コンロと土鍋を出して
オチンと一人鍋
皿に盛られた白菜と
青い春菊、新鮮なカシワ
お〜お、ベイビー、明太子もあるんだぜ
はい、ご飯、あっ、レンチンご飯
温かいうちに食べようね
湯気の間に間に、可愛いれもんちゃん
途中で何度も鐘を鳴らして止めさせようと思ったが、1コーラス聞いてやった。
「お前、ちゃんとタイトルの意図を汲めよな。『オチンと一人鍋』だぞ。しんみりした演歌を期待してたんだ。所々歌詞がメロディに合わんし・・・鍋から立ち昇る湯気の向こうに現れるれもんちゃんの幻影に免じて零点とするのだけは許してやる。14点だ」
「おお、これまでの最高得点。ありがたき仕合せにござる」
「とにかく今日の夕食は鍋で決まりだ。一人鍋を敢行する」
「うむ。そうと決まれば、話が早い」
「いや、そうではない。俺は自慢じゃないが、鍋なんて作ったことがないからな。カシワ鍋のつもりが、カシワの味噌汁やカシワ入りのお雑煮になってしまう危険性は十二分にある」
「下手をすると、もっと変なモノが出来りますな。父上は危険人物でござる」
「レシピを誰かに訊こう・・・そうだ」
特設コーナーに戻ると、女の子は同前の口上で頑張っていたが、明太子は余り売れていない様子だった。
「つかぬことをお願いしたい」と切り出すと、女の子は明らかに怯えていた。
「大丈夫。俺は危険人物だが、怪しい者ではない。鍋の作り方を訊きたい」
「・・・鍋ですか?」
「そうだ。カシワ鍋の作り方を知りたい。教えてくれたら、もう1パック明太子を買おう」
「お母さんにLINEで訊いてみます」
「うん。頼んだよ」
店内をぐるっと回って、カシワと白菜と春菊を買って戻ると、女の子が嬉しそうに、スマホの画面を見せた。
「なるほど・・・分かった。ダシの昆布が必要なんだな。ありがとう。では、もう1つ明太子をもらおう」
買い物を済ませて、家に帰った。
エコバッグをダイニングテーブルの上に置き、明太子のパックを1つ取り出し、冷蔵庫に入れると、ポン酢を出して、卓上コンロと一緒にテーブルの上に運んだ。
「鍋はいいものだ。準備が実に楽チンだ」
土鍋をシンクで洗いながら、
「『シン太郎左衛門』もこんな調子で書けたら楽なんだが、最近は長いものばかりで結構骨が折れる」
「それも、そろそろ本当の最終回でござるな」
「そうだ。去年の5月の頭に書き始めて、早1年半を過ぎた。もうじき100話だ」
「父上・・・1年は52週でござる」
「そうだよ。だから?」
「毎週書いても、100話書くには、1年11ヶ月かかる計算になる」
「そうだね」
「そうであれば、単純に言って、まだ4ヶ月半残っておりまする」
土鍋を洗う手が止まった。
「父上、どんな計算をして、『シン太郎左衛門』が、もうじき100話と仰せでござるか。実際に数えられましたか」
「俺がそんな面倒なことをする訳がない・・・」
「では、100話まで、まだ残り15話ほど書かねばなりませぬ」
「・・・愉快な気分がブチ壊しだ。貴様、俺が楽しく一人鍋をするのが気に食わないようだな」
「ひどい言い掛かりでござる。拙者は事実を言ったまで」
「そうか・・・まあいいや。俺は馬鹿だから、こんな勘違いは日常茶飯事だ」
そうは言ったものの、頭の中は真っ白になった。
どうやって土鍋に浄水を入れて、ダシの昆布を入れて、コンロに火を点けるまでをやったのか記憶になかった。
「ああ、そうだ」
思い立って、スマホを取り出し、K先輩に電話をした。
「あっ、先輩ですか?例の手紙、もう投函しちゃいました?まだ?よかった・・・いや、書いてください。打ち合わせどおりに書いてください。でも、投函は来年2月末でお願いします・・・いや、段取り違いがあって、早々に送られると困るんです。そうです・・・れもんちゃんの枠を譲るのはダメです。クラブロイヤルは、他の女の子も可愛いから、他の女の子にしてください。だから、れもんちゃんの枠は、何と言われても譲りません・・・分かりました。バイト代を2倍にしますから、頼みます。くれぐれも、この電話の件は書かないでくださいね・・・そんな心配は無用です。先輩は、私が知ってる限りブッチぎりの馬鹿なんで、先輩のあるがままの姿を好きなように書いてくれたらいいだけです・・・はい。それじゃ、よろし
く」と電話を切った。
「K先輩とは話が付いた」
「・・・『シン太郎左衛門』シリーズのラスボスは、仕込みでござったか」
「そうではない。大王カフェ七号店の『星外からのお客様』コーナーで、K先輩とBの写真を見付けたのは事実だ。ただK先輩は底抜けに馬鹿な自由人だから、周りの人間の都合とか一切お構い無しだ。いつ手紙を送ってくるか、こっちで指定してやらないと、何をしでかすか予想もできん。『シン太郎左衛門』の連載終了から1年後に送ってこられても、何の意味もないだろ。だから、投函のタイミングだけは指定したのだ」
「父上、そろそろ湯がたぎって参りましたぞ」
「そうかい。ということで、K先輩の件は片付いたが、問題は『劇場版シン太郎左衛門』の方だ」
シン太郎左衛門は、皿の上からザクッと切った白菜の一片を引っ張っていき、「エイッ!」と掛け声を発して、鍋に放り込んだ。
「実は、100話完結後にオマケとして投稿予定の『劇場版』はもう完成しているのだ。12月の初めには投稿する気でいたからな」
シン太郎左衛門は、また「エイッ!」と声を発して、白菜を鍋に投じた。
「『劇場版』では、『大王カフェ』、『れもん大王』、『守護霊さん』が重要な役割を担っているのだ」
シン太郎左衛門は、「エイッ!」「とおっ!」と、次々に白菜を鍋に放り込んでいった。
「15作も間に挟んだら、読者は、『大王カフェ』のことも『守護霊さん』のことも、すっかり忘れてしまっている。それは不都合だ」
シン太郎左衛門は、白菜を残らず鍋に投じ終えた。
「『劇場版』は簡単に書き直しのできないような大作なのだ」
シン太郎左衛門は、今度は春菊に取り掛かった。両手に一茎ずつ春菊を持ち、上下にバタバタとさせながら、「コケッ、コケッ」と言いながら歩き回り、「コケコッコ〜!」と時を作ってから、玉串奉奠の要領で一茎ずつ丁寧に鍋に投じていった。
コイツ、何してるんだろ?と思いながら、私は「かくなる上は、やむを得ん。今回は鍋の話として、その次は『劇場版』を投稿しよう」と話し続けた。
シン太郎左衛門は、奇妙な作法に従って春菊を鍋に投じ続けていた。
「おい、そのオマジナイみたいのに何の意味があるんだ?」
「特に意味はないが、父上、そろそろカシワを入れなされ」
「分かった」
私はカシワを一気に鍋に投じた。
どう考えても、正しい作り方ではなかったが、それなりに美味しそうな匂いがしている。
立ち昇る湯気の向こうに、れもんちゃんの幻影は見えて来なかったが、それはやむを得ないことだった。
鍋はそれなりに美味しかったし、明太子ご飯も美味しかった。
そして、今日は日曜日。れもんちゃんデー。昨日の鍋にパワーをもらった私はJR新快速で、れもんちゃんに会いに行った。
れもんちゃんは、宇宙一に宇宙一であり、昨日の鍋とは比較にならぬほどの強大なパワーを授けてくれた。
帰り際、れもんちゃんに見送ってもらいながら、
「私のミスだけど、来週の『シン太郎左衛門』は、脈絡もなく『劇場版』になっちゃったよ」
「そうなんだね〜」
「話は大袈裟だし、とっても長いよ」
「大丈夫だよ〜」
「『劇場版』は最終話のはずだったんだよ。おかげで、順番もメチャメチャになっちゃったし、もう何だか訳が分かんなくなっちゃったよ」
「それでも大丈夫だよ〜」
れもんちゃんは、細かいことにこだわらない大らかな女の子だった。そして、れもんちゃんの笑顔は、いつでも眩しかった。
さて、そういう訳で、次回は、
【劇場版】シン太郎左衛門(『れもん星の危機!!未来(フューチャー)Bを救え!!』)
「シン太郎左衛門」シリーズの最終話を、まだ本篇15話ほども残しながら、先行してお届けしよう。
シン太郎左衛門とカシワ鍋(あるいは「父上の勘違い」) 様ありがとうございました。